👩💼→🌼エートス論の逸話 ー 西洋音楽の歴史. 第1巻
ASADA Misuzu
エートス論の逸話
フリギアのアウロスの音色に興奮したために犯罪を犯しそうになった若者たちに、その場に居合わせたピタゴラス(哲学者)がある演奏家にドリア調の音楽を演奏してくれるように頼んだ。その音楽は厳格さと平静さを支配するハルモニアで構成されていた。この音楽を聴いたそれらの若者たちは陶酔から覚めて、自責の念にかられその場から立ち去った。
これはイタリア人研究者のグループの『西洋音楽の歴史1』の18頁の
一段落の文を私が言い換えてます。
この文の中で腑に落ちないことがあるので ちょっとお聞きしたいと思って。
1.フリギアのアウロスの音色に興奮したために犯罪を犯しそうになった若者たち
何故そんなに興奮するのですか?
アウロスは可聴域を超えた音を出すのですか?
2.ピタゴラスはドリア調の音楽が人々の興奮を抑え、平静さを取り戻すことをどこで知ったのですか?
またドリア調の音楽はなぜ人々の興奮を覚ますのですか。
🌼 Anthropic AI Claude Haiku4.5
興味深い質問ですね。この逸話について、古代ギリシャの音楽思想の文脈から考察してみます。
1. フリギアのアウロスが若者たちを興奮させた理由
これは可聴域外の音ではなく、むしろ音楽の心理的・倫理的作用についての古代ギリシャの理解を反映しています。
古代ギリシャ人は、異なるハルモニア(調式)が人間の精神状態に直接的な影響を与えると信じていました。フリギア調のアウロス音楽は特に:
- 快楽的・陶酔的な性質を持つと考えられていました
- 理性的判断を弱める傾向があるとみなされていました
- 野放図な感情(エロス、怒り、狂乱など)を喚起するとされていました
つまり、音響物理的な特性ではなく、文化的・心理的な連想が重要なのです。フリギア調は当時の文化では快楽と放縦のシンボルとされていました。
2. ピタゴラスがドリア調の効果をどこで知ったのか
この質問が核心をついています。実は、この逸話自体が規範的・教育的な寓話として機能しています。
歴史的には:
- プラトンやアリストテレスは、ハルモニアの倫理的・教育的効果について論じており、ドリア調を「勇敢さと節度」を培うものとして高く評価していました
- ピタゴラス学派は音楽の数学的・宇宙的秩序に関心を持ち、その調和が人間の魂にも調和をもたらすと考えていました
- この逸話は、音楽が道徳的な規制力を持つという古代ギリシャの信念を示すために後代に伝えられたものと考えられます
ドリア調がなぜ興奮を覚ましたのか
ここもまた音響物理ではなく、文化的・倫理的な意味論です:
- ドリア調は「節度」「勇敢さ」「男らしさ」といった덕(アレテー)と結びつけられていました
- フリギア調の「快楽」に対置される形で、精神を「統制」「理性」へと向け直すものとして機能しました
- 異なる調式を順序立てて提示することで、聴き手の心理状態を段階的に変化させるという音楽療法的な実践を示しています
結論
この逸話は、現代の音響学よりも、古代ギリシャの倫理音楽学(ethos theory) ——つまり音楽が人間の道徳性や心理状態を形成するという思想——を理解することで初めて意味が明確になります。これは紀元前5〜4世紀の理論であり、当時の教育思想や都市国家の統治観と深く結びついていたのです。
参考文献をお持ちとのことですので、その著者たちがこの逸話をどのような文脈(おそらくエートス理論の説明)の中に位置づけているかを確認されると、さらに理解が深まるかもしれません。
ASADA Misuzu
ありがとうございました。
この文献の中の「エートス論」は
3段落に分けられていて約2ページ 1ページ半かな。その真ん中の部分で短いところですがちょっと疑問点が多かったのでお聞きしました。ありがとうございました。
🌼 Anthropic AI Claude Haiku 4.5
こちらこそ、詳しい背景情報をありがとうございました。
古代ギリシャの音楽理論、特にエートス論は、現代の私たちの音楽観とは相当に異なっているため、文献を読む際に腑に落ちない部分が出てくるのは自然なことだと思います。音響学的な説明ではなく、倫理的・心理的・文化的な意味づけが中心になっているからです。
その中間部分のような短い逸話や記述には、時に圧縮された形で古代の思想が凝縮されていることがあります。今回のピタゴラスの話もそうですが、こうした具体例を通じて理論全体がより明確に見えてくることがありますね。
文献全体を読み進める中で、もし他にも疑問点が出てきましたら、またお気軽にお尋ねください。
有益な質問をいただき、ありがとうございました。
〔参考サイト〕
Pythagoras of Samos[a] (Ancient Greek: Πυθαγόρας; c. 570 – c. 495 BC)
https://en.wikipedia.org/wiki/Pythagoras
〔参考文献〕
国立国会図書館所蔵 |
資料種別 図書
著者 マリオ・カッロッツォ, クリスティーナ・チマガッリ 著ほか
出版者 シーライトパブリッシング
出版年 2009.3
資料形態 紙
ページ数・大きさ等 319p ; 26cm
NDC 762.3
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010068326
編集・文責:浅田美鈴(ASADA Misuzu)
Official Editor: Misuzu ASADA
公式ポータル:https://asada-misuzu-official.blogspot.com/
Language Analysis Collaboration: Anthropic AI Claude Haiku 4.5